「SONY α9」と「Nikon D5」と「CANON EOS-1DX Mark II」の違いを比較してみた

2017年6月16日

2400万画素のフルサイズ積層型センサーを搭載した「Sony α9」が発表になりました。α9は、ライブビューのブラックアウトフリーの20コマ/秒の連写性能という驚きのスペックさらに、1秒に60回のAF/AE演算、測距点693点、AFカバー率93%、シャッター速度1/32,000秒の無音・無振動のサイレント撮影…..と他のメーカーのカメラに圧倒的な差をつけるハイスペックでした。

そこで、ライバル機と想定されるNikon D5CANON EOS-1DX Mark IIとの違いを徹底比較してみました。

ミラーレスと一眼レフの違いの復習

本題に入る前に、ミラーレスと一眼レフの違いについて、ざっと触れてみたいと思います。

レンズ交換式のカメラにはミラーレス一眼レフ2種類があります。古くからあるレンズ交換式カメラといえば一眼レフであり、これはレフ板と呼ばれるカメラ内の鏡(ミラー)から反射した像を光学ファインダー(OVF)ごしに見ながら撮影するものです。

ミラーレス一眼と一眼レフの違い

一方のミラーレスは、イメージセンサーで受け取った光をEVF(電子ファインダ)に映して見ながら撮影する方式。一眼レフに使われているミラー(レフ板)やペンタプリズムはカメラ本体内を占領する大型部品であり、精密な光学設計も必要で構造が複雑なため、連写撮影に物理的な制約がある一方で、レンズに入ってくる世界を直接みることができたために、遅延がなくレスポンスの良い撮影ができるメリットがあります。

ミラーレスではミラーなどが不要になるため小型・軽量なボディが実現できるメリットがあります。イメージセンサーで受け取った情報を電子的にファインダーやモニターに表示する構成のため、部品数も少なくて済むし構造がシンプルです。

また、見える像も露出やホワイトバランスが適用された画像を確認しながらみることができます。しかし、センサーが受け取った情報を処理する必要があることから、見え方にタイムラグがあったり、連写中にブラックアウトが生じるデメリットが指摘されていました。

今回のSony α9は、ミラーレスのデメリットと言われていたタイムラグやブラックアウトを解決してしまった画期的なカメラです。その詳細を順次、紹介していきます。

基本情報

  SONY α9 Nikon D5 CANON EOS-1DX Mark II
メーカー SONY Nikon CANON
発売日 2017年5月26日 2016年3月26日 2016年4月28日
参考価格
(ボディのみ)
約54万円 約60万円 約60万円

デザイン・操作性

  SONY α9 Nikon D5 CANON EOS-1DX Mark II
防塵防滴
(配慮した設計)
撮影枚数(CIPA基準) EVF時 480枚
(バッテリーグリップ使用で950枚)
3780枚 1020枚
USB充電
対応記録メディア SD+SD or MS
(UHS-II/UHS-I)
XQD・CF CFast+CF
重さ
(バッテリー、記録メディア含む)
673g 1240g 1530g
サイズ
(幅x高さx奥行き)
126.9×95.6×63.0mm 160.0×158.5×92.0mm 158×167.7×82.6mm

重さは673gとNikon D5とEOS-1DX Mark IIの半分ほど。。

唯一α9が劣るところは撮影可能枚数で、ボディのみで650枚、グリップ使用で950枚とちょっと少なく感じます。ここは、ファインダーの表示に電力を使わない光学式(OVF)の一眼レフにはかなわないところです。ただし、α9はミラーレス一眼の中では大型バッテリーを搭載していることもあり、一眼レフの性能に近づきつつあります。また、USB充電が可能となっており、外付けのリチウムイオンバッテリーなどを本体に接続するスタイルでの充電も可能です。

↓のとおり、実際のカメラサイズを比較すると圧巻です。

 Nikon D5とのサイズ比較

CANON EOS-1DX Mark IIとのサイズ比較

 

オプションとして、バッテリーが2本搭載できる縦位置グリップVG-C3EM(税別3万5,000円)が発売されます。マルチセレクター、AF-ONボタン、AELボタンなどを装備しており、α9本体のUSB端子を経由して、グリップ内のバッテリーに充電も可能。

バッテリーグリップを付けるとこんな具合です。グリップを付けてもおそらく1kg程度で1DX MarkII、D5よりだいぶ軽そうです。

画質とスピード

画質やシャッタースピードに関する主要スペックを比較すると、下記のようになります。

イメージセンサー・画像処理

  SONY α9 Nikon D5 CANON EOS-1DX Mark II
有効画素数 2420万画素 2082万画素 2020万画素
センサータイプ 積層型CMOS CMOS CMOS
センサーサイズ フルサイズ
(35mm)
フルサイズ
(35mm)
フルサイズ
(35mm)
ISO感度 100〜51200
(拡張:50〜204,800)
100〜102400
(拡張:50〜3280,000)
100〜51200
(拡張:50〜409,600)
手ぶれ補正
(5軸 5.0段)
画像処理プロセッサ BIONZ X EXPEED 5 デュアルDIGIC6+
その他      

オートフォーカス・連写

  SONY α9 Nikon D5 CANON EOS-1DX Mark II
AF方式 ファストハイブリッドAF
(像面位相差AF、コントラストAF)
位相差AF 位相差AF
AF測距点 693点 像面位相差
25点 コントラスト
299点 APS-C 像面
153点
クロスタイプ 99点
F8対応 15点
61点 (エリア拡大)
クロスタイプ41点
全点F8対応
測距範囲 -3〜20EV -4~20EV
(全域-3EV)
-3〜18EV
シャッタースピード

1/8000〜30秒
(メカ)
1/32000〜30秒
(電子)

1/8000秒~30秒 1/8000秒
フラッシュ同調速度 1/250秒以下 1/250秒以下 1/250秒以下
連続撮影コマ数 20コマ/秒
(AF追従)

12コマ/秒
(AF追従)

14コマ/秒
(AF追従)
連続撮影バッファ RAWあり: 241枚 RAWあり: 200枚 RAWあり: 170枚
その他 ブラックアウトレス    

画質やAF面の主要スペックはすべてキヤノン、ニコンのフラッグシップを圧倒していると感じます。最高感度は数値的には劣っているようにもみえますが、5軸手ブレ補正(5段分)の効果があることを考えると画質とスピード面では勝っていると思われます。電子シャッターなのでメカと違って故障にも強いでしょう。

DxOMarkの計測によると、α9のセンサースコアは 「92ポイント 」と最高のセンサーのひとつであると評価されています。ライバル機のキヤノン EOS-1D X Mark II と ニコン D5 との比較では、総合スコアはα9が両機を上回っています。項目別では、ISO高感度耐性がα9が最も高く、色深度はニコン D5、ダイナミックレンジはEOS-1D Mark IIが、α9を上回ります。

DxoMark α9スコア

また、画素数は2,400万画素と D5と1DX MarkIIの約2000万画素よりも大きく、5軸手ブレ補正もあり。さらに革新的なのはフルサイズ機としては世界初の積層型裏面照射型CMOSセンサー(Exmor RS)を搭載したことです。従来のCMOS(Exmor)との違いは処理能力の速さです。α9は、α7 IIのExmorと同じ画素数でも、読み出し速度が20倍以上も高速化しているとのこと。この積層型CMOSにより読み出しスピードの効果が強力にあらわれるのが「AF」と「連写」です。その凄まじいメリットを紹介していきます。

AF測距点が693カ所で全画面の93%をカバー

まず驚くべきは、AF範囲もとんでもない広さです。像面位相差AFの測距点が693カ所とこれに25点のコントラストAFを組み合わせた「ハイブリッドAF」。

驚きなのがAFがカバーするエリアで、全画面の93%がカバーされます。


Sony UKより

ほとんど全画面といえるエリアのAF測距点を使いながら被写体を捕捉できるわけです。D5や1DX MarkIIといった一眼レフによる位相差AFではAF測距点は中央に偏っているため、カバー率は30~40%程度と画面全体を補足し続けることができなかっただけに、これはかなりのメリットといえます。

ブラックアウトなしで20コマ/秒の高速連写

 α9は、AF測距点が693カ所もあるにも関わらず、積層型CMOS(Exmor RS)の処理能力により、AF・AEの演算を最大で毎秒60回も実行。

その結果、最速1/32,000秒の電子シャッターとの組み合せにより、ファインダーのブラックアウトなし、無音・無振動で、20コマ/秒もの超高速連写を実現しています。なお、Aマウントレンズ装着時も撮像面位相差検出AFで最高10コマ/秒連写が可能です。

 一眼レフのメカニカルシャッターでは、D5や1DX MarkIIのようなフラッグシップ機でも1/8000秒が限界。さらにシャッター音も煩わく鳴り響いてたのですが、α9は完全に無音・無振動です。また、一眼レフで被写体を追いながら高速連写を続けていると、ミラーが上下することによりファインダーが高速で明滅するために目の負担を感じることもありますが、α9は完全ブラックアウトレスです。

連写速度のみならず、バッファメモリーの大容量化しています。LサイズのJPEG画像なら画質にかかわらず362コマまで、14bit圧縮RAWでも241コマまで連続撮影が可能です。

EOS-1D X Mark IIは14コマ/秒(ライブビュー時は16コマ/秒)、CFastカード使用時でRAW画像を170コマまで。D5は12コマ/秒、XQDカード使用時で14bitロスレス圧縮RAWの場合は200コマまでです。

 

さらに、積層型CMOS(Exmor RS)の高速処理により、これまで電子シャッターの課題と言われていた「ローリングシャッター歪み」が発生しないこともα9の特徴です。ただし、完全に歪みが生じないグローバルシャッターではなく、読み出し速度を格段に上げたことで事実上歪みを発生しない(アンチディストーションシャッター)という扱いです。

 

ブラックアウトレスの超高速連写がよくわかる動画

サイレントシャッターの説明ビデオ

 

α6500などに搭載されていた4Dフォーカスもフルサイズとしては初搭載され、動体への追尾性も高いAFとなっているようです。

AF性能については、プロレビュアーのTony & Chelsea Northrup氏が、次のように評しています。

α9のAFは、1D X II やD5と同じくらい良好だが、AFのロックオン・被写体の選択の点でD5に後れを取っている。しかし、ジョイスティックとこれまでに使ったカメラで最高の性能の瞳AF、顔認識AFのおかげで、このことは問題にならない。

操作系も強化

操作系もこれまでのα7シリーズではプロユースでは不満点も聞かれましたが、大幅に強化されています。まず、これまでなかった上面の左手側にドライブモードダイヤル・フォーカスモードダイヤル、ジョイスティックを新たに搭載

さらに、α7 IIシリーズでは「AF/MF/AEL切換レバーとボタン」であったものが、α9では「AF-ONボタン」と「AELボタン」として独立して配置されています。

α9とα7R IIの背面図

α9とα7R IIの上面図

α9とα7R IIの背面図 α9とα7R IIの背面図

 
その他、細かい変更点としては、右手側側面のMOVIEボタン(確かにそんなに押しやすいと思えない位置にあった)が背面に移動し、好みの機能を割り当てられるC3ボタンが、背面の右手側から左手側に移動。コントロールホイールも若干大型化して使いやすそうになっています。

EVFも強化

  SONY α9 Nikon D5 CANON EOS-1DX Mark II
ファインダー EVF OVF OVF
ドット数 368万ドット  − − 
ファインダー視野率
(上下/左右)
100 % / 100 % 100 % / 100 % 100 % / 100 %
ファインダー倍率
(35mm換算)
0.78倍 0.72倍 0.76倍
最高フレームレート 120fps

光学ファインダー(OVF)に対して視認性やタイムラグの弱点があるといわれがちの電子ファインダー(EVF)も性能が大幅に強化されました。画素数は過去最高の370万ドット有機EL(α7RⅡで236万ドット)で、ファインダー倍率もD5や1DX MarkIIよりも大きい0.78倍です。フレームレートは最高120fps(60fpsも選択可)となっており、タイムラグもOVFに肉薄しているのではないでしょうか。

液晶モニタ

  SONY α9 Nikon D5 CANON EOS-1DX Mark II
画面サイズ 3.0型 3.2型 3.2型
ドット数 144万ドット 236万ドット 162万ドット
可動式モニタ チルト方式 固定式 固定式
タッチ操作

液晶モニターは、チルト式を採用。

動画

動画は4K 30p、FHD 120pまで。EOS-1DX Mark IIの4K 60pには負けていますが、おそらく小さいボディにいろいろ詰め込んでるので熱の問題があったのだと思います。

  SONY α9 Nikon D5 CANON EOS-1DX Mark II
動画記録サイズ/
フレームレート

4K 30p
(全画素読み出し)
FHD 120p
HD 30p

4K 30P 4K 60p
FHD 120p
その他      

インターフェース

  SONY α9 Nikon D5 CANON EOS-1DX Mark II
映像/音声出力
・デジタル端子
 USB 2.0 Micro USB 3.0(Micro-B) USB 3.0(Micro-B)
外部マイク入力端子  φ3.5mm φ3.5mm φ3.5mm
HDMI

USB充電
Wi-Fi オプション対応 オプション対応
Buletuooth
GPS   オプション対応
LANポート
(100Mbps)
 ◯
(1000Mbps)

(1000Mbps) 

まとめと今後の展開

フルサイズセンサーを搭載したα7シリーズの登場により、画質面ではすでに一眼レフと同等の性能を有していたと言ってよいミラーレスも、EVFのタイムラグとブラックアウトのために、動きモノには一眼レフにはまだまだ敵わないという評価がこれまででした。風景やブツ撮りなどの被写体であればプロであってもミラーレスに移行できる段階にありました。

今回、α9の登場により、動きモノにおいてもミラーレスのデメリットが帳消しになり、レンズ交換カメラ市場のゲームチェンジャーになる可能性が見えてきた気がします。なお、ソニーは今回の積層型CMOS(Exmor RS)の次の世代となるさらに高速化した、DRAMを盛り込んだ3層積層型のCMOSも開発しているといいます。

伸びしろ、という意味では、一眼レフは基本的に「機械」ですから物理構造の制約があるため、大きな技術革新が生まれにくいものです。一方のミラーレスは、電子部品の寄せ集めであり、半導体がどんどん高速化・大容量化していくにつれて、、まだまだ進歩していくものと考えられます。

また、無音シャッターは、至近距離でのペットや寝ている赤ちゃんを撮影しても嫌な思いをせずにすみますし、音楽会などシャッター音がはばかられる撮影にも威力を発揮します。

作動音のするカメラでは撮影が許可されない場合では、防音ケースの使用を余儀なくされることもあったでしょうが、α9ならその問題が生じません。そういったシチュエーションの撮影の多いカメラマンにとっては、相当なメリットではないでしょうか。

残る課題は、レンズの本数ですかね。。

レンズラインナップをどれだけ拡充していけるかが今後のポイントとなるでしょうが、サードパーティ製も含めて目下、どんどん本数を増やしているところです。

via Nikon

現時点ではFEマウントレンズのラインナップはまだまだ層が薄く、特に単焦点の超望遠レンズがありません。(Aマウントレンズを含めても300mm F2.8と500mm F4の2本のみ。キヤノンやニコンには300mmから800mmまでの単焦点レンズが8本ないし7本)

1、2本でもリリースされれば状況はがらっと変わるでしょう。そうなると、一眼レフを使うアドバンテージは、相当低くなるのではないでしょうか。